あの春、君と出逢ったこと
『何を考えてるかわからないけど、あたってくだけろよ?』
翠の明るい声に顔をあげると、口角を上げながら翠が笑った。
『砕けたらダメだろ』
『……そうね』
いつもと違う立場で会話している2人を見ると、自然と笑みがこぼれてしまう。
『良いじゃない、栞莉。
気持ちだけ、伝えて見なさい』
そう言って私を見た翠から視線を外して、下を向く。
気持ちだけ伝える?
それって、OKするって事だよね?
『俺が言うのも何だけどさ。
栞莉チャン。
何考えてるのかわかんないけど、伝えないと後悔することは山ほどあると思うぜ⁇』
快斗君の言葉に顔をあげると、ニッと笑いながら快斗君がそう言った。
……後悔は、すると思う。
だけど、私が後悔しないために、こうくんを傷つけるなんて、そんなのはタダのワガママでしょ?
『栞莉。
深く、考えちゃダメよ』
『まー、高校生ってそんな時期だし、考え込むのは仕方ないけどな‼︎』
翠と快斗君の言葉に、思わず気持ちが揺らいでしまう。
……気持ちを伝えるだけなら、良いのかな?
OKは出来ないけど……って。
そんなの、可笑しいよね。
怪しまれるに決まってる。
『……なら、チョコをあげれば良いじゃない?』