あの春、君と出逢ったこと
口に入れると、ビターを使ったのか、チョコレートのほろ苦い甘さが広がる。
『そろそろ焼きあがるはずだから、このチョコにつけて冷蔵庫に入れてちょうだい』
そう言った翠からチョコを受け取ったのと同時に、焼き上がりの合図がなって、急いでクッキーを取り出す。
『……焦げてない』
『当たり前よ』
焦げてないことに感動しながらも、クッキーを手にとってチョコにつける。
初めて焦げてないお菓子を作れた気がするけど、翠のおかげだね!
それから、出来上がったものを冷蔵庫で冷やして、出来上がるまで翠とテレビを見た。
最後の一枚を綺麗に袋に入れて、蓋を閉めてからリボンを巻く。
『……出来た〜‼︎』
無事にラッピングを終えたチョコを見て、ホッと一安心する。
まぁ、急いで作ったからか、周りがすごい悲惨な事になっているのは気にしないとして。
『……台所で事件があったみたいね』
……翠には気にしないなんて無理だったようですね。
私が無視した所を突いてきた翠に苦笑いを浮かべて、出来上がったチョコを持って時計を見る。
『やばいっ‼︎
煌君、待ってるよね?』
ギリギリの時間であることを確認して、翠と作ったチョコを片手に、慌てて家を出る。
『ありがとね翠‼︎
行ってくる!』
『行ってらっしゃい。
良い報告待ってるわ』