あの春、君と出逢ったこと




『殻取らないといけないかな?』

『当たり前でしょう』


そう言って呆れたように笑った翠に、また溜息をついてから卵の殻を取り除いていく。


『急ぎましょうか』


翠の言葉に頷いて、殻を取り除く手を早める。


全て取り除いた後、それをこねてクッキーの生地を作り、型を取っていく。


『私がオーブンに入れておくから、クッキーにつける用のチョコ、準備してくれないかしら?』


クッキーを焼く用意を始めた翠に頷いて、さっきの翠の真似をして、チョコを細かく切っていく。


『焼きあがるまで、違うやつを作るわよ』


『ラジャ!!』


そう言って、準備し終えた翠が、私の切ったチョコを湯煎で溶かし始める。


『栞莉は、これを丸めて、粉糖を振りかけて』



そう言って、翠がいつの間に入れたのか、冷蔵庫の中から板に入ったチョコを取り出す。


翠の指示に従って、チョコをスプーンで丸めてその上に粉糖を振りかけていく。



……これ、あれか!

丸めたやつをじーっと見つめて、やっと、翠が何を作ったのかに気づく。


『これトリュフだよね⁇

食べても良い?』



『ええ。良いわよ』


翠の言葉に、持っていたトリュフを口の中に放り込む。


『美味しっ‼︎』






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