あの春、君と出逢ったこと



『栞莉、英語のノート』



そんな快斗君と翠を眺めていると、煌君が右手を出して私にそういう。



……英語の、ノート?


私、煌君に英語のノート借りてないよね?



私は偶に、煌君から数学や英語のノートを借りてるんだけど。


多分、今は借りていない気がするんだけどな。




『……違う』



1人で困惑している私に向かって首を横に振る煌君に、頭の中にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げる。




『ノート、貸してくれないか?』




そうやって言い直した煌君に、一瞬目を見開いてしまう。



だって、いつも逆なんだよ??


私、授業たまに寝ちゃうから、ノート取れない時もあるし……。


けど、煌君が寝てるのなんて見たことないんだもん。



『珍しいね、煌君寝てたの?』




私の言葉に言いづらそうに顔をそらした煌君に、何となくそうなんだと察する。




『いつも見せてもらってるし、はい!!』




そう言って笑いながら煌君にノートを手渡すと、口角を少し上げてお礼を言う煌君。




……やっぱ、煌君は普通に笑ったほうがいいよ。


何であんな意地悪な笑み浮かべるのかな?


絶対、今みたいな笑みの方がカッコ良いのに。






『余計なこと考えるな、バカ』



そんな私の考えを止めるように、頭をたたいてそういう煌君に、思考を止める。





『誰がバカ? 私がバカなら、煌君はアホだよ』




『俺がアホだと?』




『アホでしょ?』





眉間にしわを寄せる煌君に向かって、ニヤリと口角をあげて笑う。


いつも言われっぱなしだし、仕返ししなきゃ気が済まないしね。



『……お前、やっぱバカだな』



『なっ!?』


笑っている私をみて、仕返しとでもいうように鼻で笑う煌君に目を見開いて反論する。



『私のどこがバカって言うのよ?』


『全て』



そんな私の反論にでさえ真顔で返してきた煌君に向かって、思いっきり舌を出す。



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