あの春、君と出逢ったこと
『……ガキかよ』
『うるさい!』
そう言い捨てて顔を逸らした私を見て、やっぱり餓鬼だな。と言いながら笑う煌君に、もう一回舌を出してやる。
『……駅前の新しく出来たドーナツ屋。
行こうとしたんだけどな』
そんな私を見てか何なのか、誰に言うわけでもなくそう呟いた煌君に、思いっきりしがみつく。
『駅前のドーナツ屋⁉︎
私、行く!
そこ気になってたの!』
『……餓鬼とはいかねぇよ』
口角をあげて、お得意の意地悪な笑みを浮かべる煌君に、ウッと言葉が詰まる。
『……負けは認める。
けど!ドーナツ屋は行くから!』
『はいはい』
顔を輝かせる私を軽くあしらう煌君を見て、今まで黙っていた翠と快斗君がニヤニヤし始める。
『いつの間に2人で出かける関係になったのよ?』
『煌も隙が無いねー』
2人で顔を見合わせてニヤニヤ笑う翠と快斗君を見て、首を傾げる。
そんな私の頭の上に手を置いた煌君は、気にするな。と私に言い、快斗君の頭をパーで叩く。
『何すんだよ、煌!』
『余計な事を言うな』
快斗君の反論は煌君にあっさりと返され、その後も文句を言い続ける快斗君を、交換は無視し続ける。
『結構煌と仲良くなったわね、栞莉』
煌君の机に肘をついて、手のひらに頬をつきながら私を見て笑って言う翠に、思わず目を細めてしまう。
『仲良くなんてなってないから!』
煌君は、永遠に私の天敵リストに載ってるんだから。
仲良くなれるわけ無い!
『そうかしら?』
怒る私を意味深に見つめながら笑う翠に向かって口を開こうとした瞬間に、お昼終了を知らせる鐘がなる。
その鐘に、慌てて席に戻る翠の背中を見つめて、聞き残したと溜息をつきながら、私も席に着いた。