あの春、君と出逢ったこと
『……悪いかよ』
私から目線をそらしたままそう呟いた煌君に、首を思いっきり横に振る。
『私も甘党だし!
仲間だねー、煌君』
最後の一口を口の中に放り込みながら笑顔でそう言うと、驚いたように私に顔を向けた煌君と目が会う。
『……へぇ⁇ 意外』
私の言葉に、驚きを含めた声色でいう煌君に、思わず首を傾げる。
『男が甘党なんて、普通おかしいだろ』
『そう? 普通じゃない?
甘いもの、好きな人が居るのは普通だと思うし』
呟くように言った煌君に、即答でそう答える。
だって、本当に普通だよね?
このドーナツもだけど、アイスとかケーキとかも全部美味しいし!
チョコレートとか、最高だもん。
『やっぱお前、面白いな』
私の言葉に口角を上げて笑った煌君が、最後の1つのドーナツを持って私の方に差し出す。
『ん?』
『これ、好きなんだろ?』
そのドーナツは、今さっきまで私が食べていたイチゴチョコレートのドーナツで。
煌君がそう言いながら笑う。
『私、食べたから煌君食べて良いよ!』
『お前が食え』
私の言葉に即答で返した煌君に、眉間にしわを寄せて言い返す。
『だから、煌君が!』
そんな私の言葉に煌君も同じように眉間にしわを寄せて、口を開く。
『お前が食え』
そんな言い合いを続けて、2人で1つのドーナツを挟んでにらみ合う。
暫くの間睨み合っていると、煌君が、何かを思いついたかのような表情を浮かべ、ドーナツを両手で持つ。
『……煌君?』
『こうすれば良いだろ』
私の言葉に口角を上げた煌君が、ドーナツを半分に割り、片方を私に差し出す。