あの春、君と出逢ったこと
『さあな』
手を離しながらそう言うと、慌てて俺から距離をとる栞莉。
後ろに離れたせいで棚にぶつかった栞莉が、肘を抑えて蹲る。
『……馬鹿か』
そんな栞莉に呆れながらも、腰を下ろして蹲る栞莉と視線の高さを合わせる。
『見せてみろ』
抑えている手を離し、栞莉の腕を伸ばして打ったところを見る。
『たく、本当ドジだよな、お前は』
『ド、ドジじゃない!
今のは煌君が悪いんでしょ』
俺の言葉に勢いよく反論した栞莉に、フッと笑みを浮かべる。
『言い返せるくらいなら良いな。
もう痛くないだろ』
そう言った俺を、何故か栞莉が凝視してくるのを見て、首を傾げる。
『煌君、薬飲んだ⁉︎』
翠に怒られる‼︎ と部屋の中を慌てて見渡した栞莉が、棚の上に置かれた薬を見つける。
『や、やばいよ。
煌君、今すぐ薬飲んで!』
水と一緒に薬を差し出してくる栞莉から、少し距離をとる。
『俺、治ってるんだけど』
『でも薬は飲まなきゃダメだから!』
俺が一歩下がると、栞莉が一歩前に出る。
そんな感じでドンドン後ろに下がっていると、いきなり部屋の扉が開かれ、光が入ってくる。
『……何してるのよ、栞莉』
薬と水を持ったまま固まった栞莉を見て、扉を開けた張本人である翠が、呆れた様にそう言う。
『何って、あ、や!
別に、煌君に薬飲ませるの忘れてたって訳じゃないから‼︎』
飲ませてない事を教えるかの様な事を言っている事に気付かず、そのままツラツラと言葉を並べていく栞莉。