妻に、母に、そして家族になる
昨日の私は信濃さんに重い思いをさせただけじゃなく、コートも奪い取り寒い思いもさせてしまったのか。

挙句の果てには昼まで寝坊。

なんて女なんだ私は……。

もう信濃さんに頭が上がらない。

「橘さんもまだ本調子じゃなさそうだし、もう休んで」

「はい、昨日も今日もすみませんでした……」

「もう謝らなくて良いから。橘さんの友達にも橘さんを無理させないようにって頼まれてるんだから、これからも俺を頼って。またいつでもお姫様抱っこで運んであげるし」

お、お姫様抱っこは恥ずかしいから、ちょっと遠慮したいな……。

でも、とりあえずダイエットは頑張ろう。

「じゃ、おやすみ」

「おやすみなさい、信濃さん」

ベットに入ると信濃さんは電気を消して部屋を出て行く。

扉が完全に閉じると、部屋の中は闇の中に閉じられたように暗くなる。

目が暗闇に慣れてくると、天井とそこに映る海の水面のように揺れる光が見えてくる。
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