妻に、母に、そして家族になる
まるで自分が海の中にいるような錯覚を感じながら、ゆらめく光をぼんやりと眺めていた。

子供を望めない体だと話したときの、胸の痛みと冷たさは消えていた。

彼が強く抱き締められたおかげかもしれない。

目を閉じると抱き締められた感触が鮮明に蘇る。

そう言えば、私を抱き締めた後の信濃さんの目。

どこか強い決意の宿していた。

それが何なのかは分からないけれど、もしかしたら気のせいかもしれない。

いや、もしかしてじゃなくて、きっとただの

「気のせいよね」

そう呟いて私は眠りに落ちた。
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