妻に、母に、そして家族になる
「何か欲しい物はないの?」

「うん。ボクが一番欲しかったものはもうあるから」

「それって何?聞いてもいいかな?」

「え~……どうしようかなぁ」

なかなか教えてくれないけれど、口元が緩んでいる。

恥ずかしいけれど、聞かれて満更でもないらしい。

「え~とね、フミちゃんだよ」

意外な答えにさらに意外な答えが返ってきた。

「フミちゃんがここに来てくれてからね、お父さん疲れた顔をしなくなったし、すごく楽しそうなんだ。僕もすごく楽しいし、お父さんが楽しそうなのも嬉しい。フミちゃんが居てくれたらボクは幸せなんだ。これ以上の幸せを欲しがったら神様に怒られちゃうよ」

そう語ってくれたハルくんの顔は、心の奥底から溢れ出る幸せを、そのまま表に出したような笑顔だった。
< 112 / 128 >

この作品をシェア

pagetop