妻に、母に、そして家族になる
水商売のような派手な服装に、濃いメイク。

華やかな見た目だけど、暗い影を背負っている。

その女性は息を乱しながら、信濃さんを真っ直ぐ見つめ、もう一度彼の名前を呼ぶ。

「誰ですか?」と、尋ねようと信濃さんの方を見る。でも、その言葉が口から出ることは無かった。

なぜなら隣にいる信濃さんは表情を凍りつかせたのまま、後ろを振り返ろうともせず、身を固く強ばらせていたから。

こんな表情の信濃さんを見るのは初めてで、すぐに只事ではない状況に気付いた。

「あの、弥……。私貴方に会いたくて……」

そう言って、女性が近付こうと一歩踏み出そうとする。

「俺は会いたくなかった」

と、背を向けたままの彼から放たれた突き放す一言で、女性の足は止まる。

いつもの信濃さんからは想像できない冷たい声に、思わず私までビクッと体を震わせてしまう。
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