妻に、母に、そして家族になる
「私はお礼を言われるようなことはしていません。むしろ謝るべき立場なんです。私がちゃんとハルくんに遅くまで外にいてはダメなのだと、言うべきだったんです。そしたらこんなことには……」

「違います。それは親として私が注意することだったんです。アナタは何も悪くありません」

「でも、ハルくんに怖い思いをさせてしまったのは事実なんです。……間違っていたんです。あのとき、私はハルくんに話しかけるべきじゃなかった」

ハルくんが遅くまで公園にいたのは私を待っていたからでもある。

もしも、あのとき話しかけていなかったら、ハルくんは早く家に帰っていたかもしれない。

怖い思いをさせてしまった罪悪感と、もしもあのまま誘拐されていたらと思うとの恐怖。

それらの波が襲いかかり、全身が震えた。

震えに耐えていると、肩に手が置かれる。

顔を上げるとそこには優しい顔をした彼の姿があった。
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