妻に、母に、そして家族になる

初めての回転寿司

次の日の昼。

十二時を知らせる音楽が流れる。

いつものようにレジでお客さんを待っていると、ひまわりの扉が開いた。

「いらっしゃいま、あ……」

「こんにちは、橘さん」

店に来たのは信濃さんだった。

その顔はいつもの疲れた感じではなく、どこか人懐っこさを感じる晴々としたもので。

いつも見ていた疲れた顔とはかけ離れ過ぎていて、同一人物か疑いたくなる程だった。

「えっと、その……今日は何にしましょう」

「今日は唐揚げ弁当をお願いします」

よく店に来ていたこの人は、こんなに明るくてハキハキと話す人だっただろうか……。

ギャップに唖然としていると、彼は周りにお客さんがいないのを確認してから、グッと距離を縮めてくる。
< 27 / 128 >

この作品をシェア

pagetop