妻に、母に、そして家族になる
「大丈夫です、約束します。私だって信濃さんやハルくんが大切だから、心配させるようなことをしたくないです。だから無理はしません」

「……うん。ちょっと、安心した」

顔は見えないけど、柔らかな声からして信じてくれたようだった。

病気のことを話しただけなのに、信濃さんの存在が話す前よりも心強く感じる。

ここでお世話になるのは一ヶ月だけと決めていたけれど、心の中で欲張りな自分が顔を出す。

せめてこの人が抱えるプロジェクトが終わるまで、この家にいても良いだろうか。

私が必要とされる間だけでも良いから、そばにいさせて欲しい。

彼の広い背中に腕を回すと、ギュッと腕に力を込めた。
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