クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「みんなちゃんと、お前が頑張ってたのを知ってるんだ」

三人がくれる優しい視線に、我慢していた涙が頬を伝う。


「私、私本当に……ワームデザインで働けて、幸せです……」

泣いている私を見て三人は笑っているけど、本当にそう思うから。



「いつまで泣いてんだ」

私の目の前にティッシュの箱を置いた佐伯さんは、またいつもの顔に戻っていた。

そんな風に無表情になったって、さっきくれた佐伯さんの笑顔は、もう私の頭の中にインプットしてあります。


「俺はこれから出掛けるが、今日は戻らない」

「あ、分かりました」

佐伯さんは本当に、どんな時も冷静で切り替えが早いな。



ジャケットとコートを羽織った佐伯さんは、そのまま会社を後にした。

少しだけ肩の力が抜けた私は、自分のデスクに戻った。


「恵梨ちゃ~ん、このチーズケーキ食べていいの?」

「うん、どうぞ。私の分は残しておいてね」

成瀬君はチーズケーキを見て目を輝かせている。拓海さんは甘い物が苦手だから、そんな成瀬君の隣で何かの資料を見ているようだった。


パソコンに向き直すと、マウスの下に紙が挟まっていることに気が付いた。

折りたたまれている紙をそっと開くと……。


「はっ!?」

驚きのあまり声を出してしまったけれど、二人には気付かれていないみたいだ。

私はもう一度その紙をよく見てみる。


〝今日、約束を果たしてもらう。
十八時、〇〇駅に来い〟


っていうか……なんかこれ、果し状みたいなんですけど。

でもきっとこれは、私が佐伯さんに奢るというあの日の約束のことだ。


時計を確認すると、十七時を回っている。十八時ってことは、三十分前には出なきゃいけないから……。



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