クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「恵梨ちゃーん、こっちきて一緒に食べない?」

成瀬君に呼ばれて二人の元へ行った私は、目の前にあるチーズケーキを見つめる。

これを食べてしまったら、佐伯さんと食事をする時に……。


でも、やっと買えたチーズケーキ。佐伯さんか……チーズケーキか……。


「恵梨ちゃん?」

「これ!成瀬君にあげる!」

「え?でも前からこのチーズケーキ食べたいって言ってましたよね?」

「いいの!もう惑わせないで!」

「いや、別に惑わせてるつもりはないけど」


チーズケーキを見ないようにしている私の横で、さっきから拓海さんがクスクス笑っている。


「いいじゃん成瀬、ありがたく貰っておきなよ」

「恵梨ちゃんがいいなら、今食べちゃおー」


チーズケーキはまた並べばいい。
でも佐伯さんとの時間は、並んだって買えないんだから。


美味い美味いと言いながら食べている成瀬君を見ないようにと、私は拓海さんに話を振った。


「コンペ、きっと勝てますよね?」

「恵梨ちゃんはどう思う?」

「勝てると思います」

私の言葉に、柔らかく微笑みながら頷く拓海さん。


本当に、大人で優しい人だ。私は何故拓海さんではなく、佐伯さんを好きになったんだろう。

あの面接での印象は最悪だったはずなのに、思えば最初から私は佐伯さんしか見ていなかった。



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