クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「俺ほんと、こんな男前二人が面接官だった時にはマジで驚きましたよ」

成瀬君はワームデザインの面接について、酔いながらも熱く語っている。


「事務員の時みたいに、男性社員も面接したんですか?」

「あたり前だ」

隣にいる佐伯さんに小声で話し掛けると、思った取りの返事が返ってきた。

そうだけどさ、もっとなんかこう優しく言えないもんかな。


「最初からワームデザインに移る社員は一名って決まってたんですか?」

そこまで緊張することなくこうやって佐伯さんに話しかけることができるのは、多少お酒が入っているからなのかな。


「いや、最初は三名の予定だったが希望者があまりいなくてな。数名面接した中でも結局採用に値する人材が成瀬しかいなかった。成瀬は資格も持ってたし、本当はデザインの会社に就職するのが夢だったらしいからな」

事務員の面接の時は思ったよりも沢山いたけど、男性社員は希望者が少なかったんだ。


「まぁ先が全然見えない会社に移るなんて不安なだけだからな。ある程度年齢がいってれば余計そう思うんだろ」

先が見えない、か。確かにそういう考えを抱くのはあたり前だと思うけど、今日三人の話しを聞いただけで私にはなんとなく分かった気がした。


「でも佐伯さんには、先が見えてるんじゃないですか?」


「当然だ」


その自信に満ち溢れた言葉は決して嘘じゃないと、そう思える。この会社を設立する為にきっと沢山の努力をしてきたんだ。

佐伯さんや拓海さんは、この先会社がどうなるかなんてことは少しも考えていないと思うから。



「あれー?なに二人でコソコソ話してるんですか~?」

「コソコソなんてしてませんよ。ちょっと成瀬君飲み過ぎじゃないの?」

程よく焼けた肌でもハッキリと分かるくらい顔が赤い成瀬君。


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