クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「全然平気ですよ。そんなことより、恵梨ちゃんって彼氏いないの？」

「え？ちょ、なに言いだすのよ！」

可愛い顔して、もはやただの酔っぱらいじゃん。嫌だな、こういう話題になることだけは避けたかった……。


「いるの？いないの？」

「いいじゃないですか、そんなの」


「どうせいないんだろ」


誤魔化すようにお酒を飲んでいる私に変わって、佐伯さんが呟いた。


「ど、どうせってなんですか？」

「じゃーいるのか？」

「うっ……いない、ですけど……」

佐伯さんの言葉を肯定するしかないという現実が、なんだか悔しい。私は更に続けてお酒を口に運んだ。

拓海さんも父親のような目で微笑ましく見てないで、止めてくれればいいのに。


「あっ！俺思い出した！」

突然大きな声を上げた成瀬君に驚き、口に含んでいたお酒が出そうになって慌てておしぼりを口に当てた。

「なんですか突然。ビックリするじゃないですか」

「うーん」と声を出しながら天井を仰いで何かを考えた後、ポンと手を叩いて私を見つめた成瀬君。



「恵梨ちゃんさ、昔営業部の人と付き合ってたよね？」


その瞬間、周りから聞こえていた騒音がピタリと止んだ気がして、それと同時にあの日感じた悲しみ、怒り、不安、全ての感情が一気に押し寄せてきた。


胸が苦しくて痛くて、それなのに……私の前で新しい彼女を、愛おしそうに見つめていた河地さんの顔ばかりが浮かんでくる。


よく考えたら、彼は最初から私を好きだったわけじゃないのかもしれない。


自分好みにならないダサい私には、もう用はなくなった。だから河地さんは……。




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