届かないこの想いを、胸に秘めて。





「ほら、書きなよ」

「……なにを」

「最後の想いを、だよ」



目を大きくさせた。

なにを言うかと思えば……。



そんなの書いても意味ないよ。
だってもう遅い。



キミにはもう届かないのだから。





「やってみないと分かんないじゃん」

教卓に肘を乗せて俯いた私をのぞき込む。


「騙されたと思ってやってみようよ」


簡単に口にする彼女を少し睨んだ。


香奈恵ちゃんの言っていることは身に染みるほど理解できるから。



いつだって私は逃げてきた。

チャンスを掴みに行こうとしないで、その場でうずくまってじっとして、前に進もうとしなかった。


そして必ず最後には大きな後悔と悲しみが私を襲う。




手に持っているチョークを握りしめた。



本当に、いい事は起きる?

もう終わった恋だけど。


せめて今日まででいい。明日からはキミを想うことはやめるから。




だから最後に──、




キミに会いたい。






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