夏の日、僕は君の運命を変える
『あの…どういうことでしょうか』
「僕もわかりません…。
それ、僕が落としたスマホのはずなのに」
『電源つきません』
「充電切れちゃったんでしょうね…。
出掛ける時10%だったので」
『…わたし持っていましょうか』
「え?」
『返す方法わからないですし。
わたしが返されるまで持っていることにします』
「…お手数おかけします、ありがとうございます」
僕のスマートフォン、一体どうしたのだろう。
ごく普通のスマートフォンだったはずなのに。
時空を超えるスマートフォンなんて、説明されなかったよ。
どこのSF作品だ…?
『わたし、春沢心といいます。
高校2年生です』
「僕は春田水樹といいます。
大学1年生です」
『じゃあわたしより年上ですね。
敬語使わなくて良いですよ』
「そうですか…?」
『はい。
学部はどこなんですか?』
「文学部」
取り敢えず名前と年齢の紹介をし合い、僕は気付く。
もうすぐでアルバイトの時間だ。
「ごめん!
僕バイトなんだっ…」
『わかりました。
それじゃ、わたしが持っているので安心してください。
あ、悪用はしないので』
「お願いね、ありがとう!」
電話を切り、急いでアルバイト先のファミレスへ向かう。
柏ユメの小説をほぼ大人買いしてしまった僕のお財布はすっからかんで。
その上父子家庭だから、出来る限り支えたいと思っているので、アルバイトをするようになった。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
父はアルバイトをしなくても良いって言っているけど。
なんとなく、上手くその言葉に甘えられない。
まだ、自分が何者なのかわかっていないから。
父だと言うけど、信頼出来ていないのかもしれない。
「お待たせ致しました」
父も高校時代から友達だと言う太田達も。
「過去を思い出さなくて良い」と言ってくれているけど。
僕は思い出したいんだ。
ずっと目が覚めた時から感じている、心の穴を埋めたいから。