†皇帝-emperor-†《Ⅰ》


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琥珀が入っていった寝室の前で俺は息を潜め、中を探ろうとドアに耳を当てていた。


だが、一向に扉の向こうからは物音一つ聞こえてこない。



(……おかしい。……静かすぎる。)



俺の後ろには、未だに俺の行動を傍観しながら真面目君面している右京の姿があった。


俺は、しばらく扉の前で中の様子を探ろうと空気と同化したかの様に静寂を守っていたが、


——俺は自分が皇帝一の短気だって事を忘れていた。


次第にジッとしている事に堪えきれなくなった俺は、



…突撃だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


動き出した。



「…右京、行くぞ!!」



俺の声に右京は一瞬、遅れを取り、



「……ぉ、おお!!」



訳も分からずに反応したらしい。


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