†皇帝-emperor-†《Ⅰ》



勢い良く開け放った扉に反して、部屋の中は静寂に包まれていた。


明かりも付けずに、カーテンの締まりきった部屋は日が暮れ始めたばかりだというのに恐ろしく闇に包まれている。


そのせいか、ドアから漏れた廊下の照明が一筋の光を灯した。


その光が指し示す方へ視線を向けた時、俺と右京は目を見開いた。



「「………ッ!!」」



だが俺たちが目を見開いたのは、



もちろん部屋が暗過ぎる事で驚いたわけじゃ無かった。


類が言っていたのは、どうやら本当だった。



琥珀は、眠っていた。——”薬も使わずに”。



それも、他人をテリトリーに入れながらだ。



(…なぁ、類。お前は知ってたのか?)



琥珀のこの落ち着きはらった様に眠る姿をよ。


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