不機嫌なキスしか知らない



「……紘、お疲れさま」





私は思わず近づいて、紘にタオルを差し出した。


他にもタオルを渡そうとしている女の子はたくさんいたから、紘を囲んでいた女の子たちの視線が一斉に私に集まる。



……思い付きでかなり目立つことをしてしまった、と少し後悔。


紘は私の声に反射的に顔を上げて、表情の読めない顔でしばらく私を見つめる。



無言で、表情ひとつ変えないで。

私のタオルだけを受け取って、1人で歩いて行ってしまう紘。





「紘!」




私は慌てて追いかけて、水道で顔を洗う紘に追いつく。



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