不機嫌なキスしか知らない
「紘」
呼び掛けても返事をしない紘は、濡らした顔を私の渡したタオルで拭いている。
少し濡れた髪から水が滴って、その色気に思わずドキッとしてしまった。
「……紘って走れたんだね」
「は?」
つい思ったままのことを口にしてしまったら、思いっきり不機嫌な彼に睨まれて、へらりと笑う。
「いつも気怠そうだから、走ったりしないと思ってた」
「走らねーよ。普段なら」
「え?」
「……お前のこと泣かせてるアイツが1位になって喜んでたら、ムカつくと思っただけ」