不機嫌なキスしか知らない
「……ねえ、紘。
格好良かったよ」
「どこがだよ。負けたし」
水道場に寄りかかったまま、私の顔を見ない紘に、へらりと笑う。
「圭太はサッカー部のエースなんだから、速くて当たり前じゃん」
「何、バカにしに来たわけ?」
「……嬉しかったよ。私のためだって思ったら」
「お前のためじゃねーよ。己惚れんな」
ぶっきらぼうな言葉。前髪で隠れた表情。赤くなった耳。
──衝動的にその全てを、抱きしめてしまいたくなった。
「紘、ありがとう」
「だからお前のためじゃねーっつの」