不機嫌なキスしか知らない
「紘の家もこっちの方なの?」
「いや、違うけど」
「え……」
……私の家まで、送ってくれるってこと?なんで?
戸惑う私を置いて、紘はどんどん進んでしまう。
「ねえ、送ってくれるの?」
「んー」
なんだか曖昧な答えは、きっと照れ隠しなのかもしれない。
なんだか可愛くて、頬が緩んでしまう。
「……紘、優しいところあるね」
「俺のことなんだと思ってんの?」
「クズだと思ってた」
「……」
無言のまま私を睨む。顔の綺麗な人の怒った顔って、どうしてこんなに迫力あるんだろう。