世界はきみに恋をしている。
「ノガミくん……なんで、いるの」
「いたら駄目なのかよ」
カバンの紐を、ギュッと握りしめる。
ノガミくんが目の前にいる。
待ちくたびれたとでも言うように腕を組んで、下駄箱にもたれかかっている姿も様になる。暗くて、表情はよく見えないけれど。
「駄目じゃないけど、……。
先に帰っても、よかったのに」
本当は。本当は、ノガミくんがここにいてくれたことが、凄く凄く嬉しいのに、私って素直じゃない。
ノガミくんは黙って、そしてゆっくりともたれていた下駄箱から背中を離した。
「ノガミくん……?」
ノガミくんは私の言葉に答えることなく、ゆっくりこちらへ近づいてきて、私の目の前で、歩みを止めた。
私より随分と背の高い彼を、見上げる。さっきまで曖昧にしか見えていなかった表情が、ハッキリと見える。
ノガミくんは、今にも泣いてしまいそうな顔をしていた。少し揺らせば、一瞬で崩れ落ちてしまうようなジェンガのように。
「ノガミく……」
「…ミウ」
今にも崩れてしまいそうな彼は、絞り出すような声でそう言った。私が返事をしなかったからか、もう一度ハッキリとした声で再び言う。
「ミウ」
それはまるで、私の存在を確認するかのように暖かい声だった。
そして、その言葉と同時に、ノガミくんが私の手をとった。やさしく、それでも、少し強引に。
「きゃっ……!」
反動で、倒れそうになったわたしを、ノガミくんが受け取った。