溺愛ENMA様
でも……よく考えるとそうなるよね。

転校生としてうちの学校に来たのも彼の神通力だったし、去るときは手っ取り早くみんなの記憶を消した方が早い。

……じゃあ、私は?

私の記憶はどうして消さなかったの?

忘れちゃったら楽なのに。

忘れられるかなって思ったのに。

ツ-ッと、涙が頬を伝った。

もう、ダメだ。

「……亜子ちゃん」

私は、震える声を必死で抑えながら亜子ちゃんを見た。

亜子ちゃんは、どう思うだろうか。

閻魔との出来事を正直に話したら。

私を嘘つき呼ばわりするだろうか。

それとも、気味悪がるかな。

分からないし怖い。

でも、ここから抜け出して、私は先に進みたい。

じゃないと苦しくて悲しくて、耐えられない。

「あのね、亜子ちゃん」

私は大きく息をしてから、ポツポツと話し出した。
< 251 / 328 >

この作品をシェア

pagetop