恋してバックスクリーン
無愛想な男、溺愛疑惑

気になることを聞けないまま、悶々とした毎日が過ぎていった。寿彦さんは相変わらずなにを考えているのかわからない。表情に出さない。けれど、私のことは好きなのかな? 言葉に出さないけれど、ぎゅっと手をつないでくれたり、抱きしめてくれたり。嫌いな女性にはしないやんな? そんなこと。

ほんの少しの自信と、かなりの不安が背中合わせのまま、三月に入った。土曜日の朝、珍しく寿彦さんが寝坊をしている。

「寿彦さん、おはよう。もう九時やで」

ゆすり起こすとき身体に触れたら、なんだか熱い……。

「寿彦さん、体調悪いん?」

「んー」

慌ててベッドから起き上がると、体温計を持ち出して、寿彦さんの熱を計った。

「えっ、三十九度!? すぐ病院に行かな!」

「んー」

重い身体をベッドから起こすと、寿彦さんがモソモソと身支度を始めた。

「インフルエンザかも?」

「んー」

ただでさえ無口な寿彦さんが、さらに無口になった。さっきから「んー」しか言葉を放っていない。

「インフルエンザやったら、私にうつして? そしたらすぐに良くなるやろ?」

「んー」

「んー」しか言わない寿彦さんは、身支度を終えて、出かけていった。落ち着きなく私は、部屋をウロウロすることしかできなかった。

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