恋してバックスクリーン

「莉乃が一週間もいてくれるだなんて。なんなら、ずっといていいよ!」

穂花が私を歓迎してくれた。うれしいけれど、なんだか申し訳ない気分になった。

「でも、私がいたら。海津さんが遠慮するんとちゃう?」

「涼介くん? ああ、彼は遠慮しないから。莉乃がいても遠慮なく来るよ」

「そうかなぁ……」

そうつぶやいた瞬間、タイミングよくインターホンが鳴った。

「ほら、噂をすれば影!」

インターホンを鳴らしたのは、海津さんだった。ホンマに遠慮なかった……。

「こんにちは! 寿彦、インフルエンザだってね? 羽島さんは大丈夫?」

「私は平気です……」

「磁石みたいにぴったりくっついているんでしょ? ラブラブだから」

コンビニの袋から、ビールやおつまみを出しながら、ひやかすように言った。

「ラブラブとかやないですから」

「またー! 溺愛しているでしょ?」

「溺愛?」

海津さんの言う『溺愛』の意味がわからない。溺れるくらいの愛? たしかに私、寿彦さんのこと、好きやけれど。

「寿彦の溺愛っぷり、半端ないよね」

いつの間にか、小さなテーブルに缶ビールとおつまみが用意され、乾杯の準備が整っていた。

「寿彦さんが? いやいや、なにをおっしゃいますやら!」

三人で乾杯をしながら、はははと笑った。寿彦さんが私を溺愛? そんなわけがない。

< 16 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop