恋してバックスクリーン
無愛想な男、誤解を解く
①
「お疲れ様です」
外回りを終えて、職場に帰ってきたのは十八時を少し過ぎた頃だった。
「お疲れ様、莉乃。私、もうすぐあがるけれど」
穂花が遠慮がちに、私に声をかけた。
「うん。私も日報だけ書いたら……」
「わかった。涼介くんが四人で食事をしよう、だって」
海津さんの心遣いはありがたいけれど。寿彦さんとは、会いたいような。会いたくないような。
「うん……。ありがとう」
海津さんがいた方が、寿彦さんも私の言うことを、信じてくれるかな? でも、浮気のことは、問い詰められない。さすがにふたりの前で恥をかかせるわけにはいかないから。
急いで日報を書いていると、デスクに置いた携帯電話が、バイブの音を響かせた。
あ……。加茂さんからの着信、だ。出ようか、出まいか、悩んだ。でも、やっぱり無視することはできない。
「はい。羽島です」
『莉乃ちゃん? 加茂です』
タメ口だけでは足りないのか、名前で呼ぶようになってしまった……。
「どうも。お世話になります」
『なに? その他人行儀な感じ』
「仕事のお電話でなければ、失礼します」
『ちょっと、待てよ?』
勢いよく電話を切ろうとした私に、加茂さんの口調がきつくなった。
『会いたいんだけれど?』
『会いたい』って言われても……。寿彦さんと私の仲を引き裂こうとする人に、会いたいなんて思わない。
「まだ仕事があるので」
『待ってるよ。ずっと』
そう言うと、一方的に電話が切れた。待ってる……って、どこで? なんだか加茂さんがストーカーみたいに思えて怖くなってきた。
早く日報を書き終えて、穂花と一緒に職場を出よう。寿彦さんに会って、誤解を解いて、一緒にいてもらわないと困る。
外回りを終えて、職場に帰ってきたのは十八時を少し過ぎた頃だった。
「お疲れ様、莉乃。私、もうすぐあがるけれど」
穂花が遠慮がちに、私に声をかけた。
「うん。私も日報だけ書いたら……」
「わかった。涼介くんが四人で食事をしよう、だって」
海津さんの心遣いはありがたいけれど。寿彦さんとは、会いたいような。会いたくないような。
「うん……。ありがとう」
海津さんがいた方が、寿彦さんも私の言うことを、信じてくれるかな? でも、浮気のことは、問い詰められない。さすがにふたりの前で恥をかかせるわけにはいかないから。
急いで日報を書いていると、デスクに置いた携帯電話が、バイブの音を響かせた。
あ……。加茂さんからの着信、だ。出ようか、出まいか、悩んだ。でも、やっぱり無視することはできない。
「はい。羽島です」
『莉乃ちゃん? 加茂です』
タメ口だけでは足りないのか、名前で呼ぶようになってしまった……。
「どうも。お世話になります」
『なに? その他人行儀な感じ』
「仕事のお電話でなければ、失礼します」
『ちょっと、待てよ?』
勢いよく電話を切ろうとした私に、加茂さんの口調がきつくなった。
『会いたいんだけれど?』
『会いたい』って言われても……。寿彦さんと私の仲を引き裂こうとする人に、会いたいなんて思わない。
「まだ仕事があるので」
『待ってるよ。ずっと』
そう言うと、一方的に電話が切れた。待ってる……って、どこで? なんだか加茂さんがストーカーみたいに思えて怖くなってきた。
早く日報を書き終えて、穂花と一緒に職場を出よう。寿彦さんに会って、誤解を解いて、一緒にいてもらわないと困る。