私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。


「椿とは、ずっと一緒にいるんだもんね……」

「9年だよ、ふふっ、私達ほとんど一緒に育ってるんじゃない?」


紗枝の言葉に、なんだか感動する。

こんなに、誰かと長い時間一緒にいることって、家族以外にあるんだね。


紗枝と出会えた事は、私にとって奇跡のようで、出会うべくして出会った運命のようにも思えた。


「わぁ……椿、髪は上げたんだ?」


紗枝は、さっきスタッフがしてくれたヘアセットを見て、感動した声を出す。


「うん、アップにした。ほら、暑いじゃない?」

「なら、アサガオの髪飾りが合うね!」


紗枝が、私の髪に刺さるアサガオに触れる。それを鏡越しに見つめて、口元を緩ませる。


「なぁに、椿、なんで笑ってるの?」

「いや、花が本当に好きだなって。変わらないよね、それだけは…」

「なんだ、そのこと?うん、花はずっと好きだよ」


好きなものの話をしながら、ニコニコと笑う紗枝に、私まで笑顔になる。


紗枝のその優しさに、贈られた花にどれだけ救われたのか、紗枝は知らないだろう。

< 150 / 211 >

この作品をシェア

pagetop