私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
「椿とは、ずっと一緒にいるんだもんね……」
「9年だよ、ふふっ、私達ほとんど一緒に育ってるんじゃない?」
紗枝の言葉に、なんだか感動する。
こんなに、誰かと長い時間一緒にいることって、家族以外にあるんだね。
紗枝と出会えた事は、私にとって奇跡のようで、出会うべくして出会った運命のようにも思えた。
「わぁ……椿、髪は上げたんだ?」
紗枝は、さっきスタッフがしてくれたヘアセットを見て、感動した声を出す。
「うん、アップにした。ほら、暑いじゃない?」
「なら、アサガオの髪飾りが合うね!」
紗枝が、私の髪に刺さるアサガオに触れる。それを鏡越しに見つめて、口元を緩ませる。
「なぁに、椿、なんで笑ってるの?」
「いや、花が本当に好きだなって。変わらないよね、それだけは…」
「なんだ、そのこと?うん、花はずっと好きだよ」
好きなものの話をしながら、ニコニコと笑う紗枝に、私まで笑顔になる。
紗枝のその優しさに、贈られた花にどれだけ救われたのか、紗枝は知らないだろう。