私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
だからこそ、私は紗枝を裏切れない。
うん、今、改めてそう気づいた。
***
「「お待たせ」」
私たちがお店を出ると、外に浴衣を着た男子たちが揃っている。
「うぉっ、マジで萌える♡」
そう言って私たちに駆け寄ってくる藍生先輩は、茶髪に生える、白地の浴衣に紺の帯だった。
「藍生、セクハラだよ?」
黒地に黒縁の帯をつけた瑞希先輩が、藍生先輩の隣に並んで、呆れたようにため息をつく。
「おい、一護行かなくていいのかよ?」
一護は紺地に白の帯、尚くんは灰色の生地にしじらの帯をつけていた。
「い、いや俺は……」
俯いて顔を逸らしている一護は、口元を手の甲で覆って、顔を赤らめている。
紗枝の浴衣姿に照れてるんだろうな……。
私を抱きしめてくれた事に、特別な意味なんてないんだよ、きっと……。
私が泣いてたから、優しい一護は同情した。
ただ、それだけの事……。