私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。


***


放課後、茜に染まる廊下を一人歩く。

席が前のせいで、やたら先生に当てられるは、やっかいごとを頼まれる。


「はぁ……ついてない」

なにもかも、ついてない気がする。

私は、授業で使った地球儀を片しに、社会科準備室から戻ってきたところだった。


トボトボ歩いていると、「椿!!」と、後ろから名前を呼ばれた。

立ち止まって振り返ると、サックスを手に駆け寄ってくる紗枝。どうやら、部活を抜け出して来たみたいだった。


「紗枝!」


私は手を上げて、紗枝と向き合った。
紗枝は乱れる呼吸を整えて、私を見つめる。


「椿……あ、あのね…」

「うん、なに?」


感情に真っ直ぐな紗枝が、言葉を選んでいる。
それが珍しくって、私は嫌な予感がした。

紗枝は、私に何か…大事なことを言おうとしてる?


「椿は、一護のこと、どう思ってるか、聞いた事あるよね?」

「っ……うん」


それは、話したいことがあると言って、紗枝が私に言った言葉。遠まわしに好きじゃないと答えた私の……嘘の1つ。


でも突然、どうしてそんな話を……?




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