私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
「椿……私、本当はどこかで……気づいてた」
「………え?」
何を、言い出すんだろう。
紗枝の言葉が、怖い……聞きたくない。
ドクンッ、ドクンッと、心臓が嫌な音を立てる。
「でも、自分が傷つきたくなくて、気づかないふりをしてたんだ」
「紗枝、何の話……」
「私が一護くんの話をする度、椿は辛そうな顔してた」
「!!」
その一言で、気づいてしまった。
紗枝は、知ってるんだ………私が、私が一護を好きな事。
だって、朝もおかしかった。
まるで私の気持ちを試すような言い方、私が嘘をつくと傷ついた顔をしてたこと……。
全部、私の嘘に気づいて……。
「私、それでも椿に……とられたくなかったっ」
「紗枝……」
ポロポロと、紗枝の瞳から涙が零れる。
そんな紗枝に近づこうとして進めた足と伸ばした手は、すぐに止まる。
だって……私に紗枝を慰める権利がある?
私が……傷つけたのに……。