私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
ふと、顔を上げると、外側の一護の肩が濡れている事に気づいた。
私に、傘を傾けてくれてるんだ……。
高鳴る鼓動が、切ない。
こういう優しさを知っているから、きっと私は一護の事を諦めようとしても、出来ないんだ。
私は、一護の手の少し上から傘の取っ手を掴み、傘を一護の方へと傾けた。
「椿……?」
「………もっとそっちでも大丈夫」
「……悪いな」
今、普通に会話出来てた……。
いつもみたいな喧嘩っぽい話し方じゃないから?
ううん、私がそうしたからだ。
だって、一護はいつも私と向き合おうとしてる。
私が突き放しているだけだ。
傘の取っ手に重なる手が温かい。
それを名残惜しむように離す。
「やっぱ変わんねぇな、椿は」
「え……?」
一護の言葉の意味が分からずに顔を見上げると、その表情に息を呑む。
久しぶりに向けられる、笑顔だったからだ。
一護が、笑ってる……。
その笑みが、私に向けられるなんて……嬉しいけど、どうして…。