私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。


「それ、一護が使って。私、1人で帰……」

「早く入れ、帰るぞ」


一護はバッと傘を開いて、私の腕を引くと、傘に無理やり入れる。その行動に驚いた私は、呆然と一護を見上げた。


「な、何で??」


今まで、私と帰るなんて言ったことないのに……。
嫌いな相手と、普通一緒に帰る??


「何でって………傘、一つしかねーし」

「……別に、傘いらないから1人で…」

「ゴチャゴチャうるせー、帰るったら帰んだよ!」


イライラしながら私を促す一護に、仕方なく従った。


振り払うことも出来た。
なのに、一護から逃げ出さなかったのは、きっと……。

こんな状況でも、心の中では嬉しいと思ってるから…なんだ。だから、断れなかった。


2人、雨の中相合傘をする。

「「………」」

会話がないからか、やけに雨の音が耳についた。
私は、ただ雨が地面の水たまりに落ちるのを見つめながら歩く。


< 68 / 211 >

この作品をシェア

pagetop