今日も明日もそばにいて
しかしな…、実季先輩のメール通りなら、俺が知らないところで何があるか解らないって事だ。大人なのに、まだそんな事するのかって、思うような事。…あぁ、それが、俺らよりもまだ若いって事か。自分が好きなら好き。その思いの為なら、何とかしようとする。その判断の方向を見誤る年齢か…。良くない事をしてるとは、自分でも思うだろうけどな。はぁ。
実季さんの言う通りか。俺の迂闊な言動は実季さんに跳ね返る。か…。当分は彼女が居るという噂があるから、話し掛けても大丈夫なのかも知れない。それが頻繁に…目立ってしまうと。
まずくなって来たら…。

まだ、確かな気持ちで始めてる訳じゃない。ただ一方的に、半ば強引に誘っているだけだ。
まだどうなるか解らない。実季さんの考え方もまだ解らない。自分の決めた生き方に合わないなら、俺は無しだろうから。
今まで独身だったのは、ただ、恋愛に対する気持ちが希薄だっただけなのだろうか。
何かあったのか…。
…忘れられない人が居るとか。好きになる事と、結婚は全く別物と考えるのか。

実季さんの事、いいと思っても、まだ何も知らないんだよな…。俺に心を開きかかっているようにも思えるんだが。
…だとしても…、いかにも若僧みたいな事してしまった。気持ちも確かめず、キスしてしまった。張り倒す事も、拒絶もされなかったけど…。
俺もずるくて、いきなりだったから…拒否は無理だったのかも知れない。…はぁ。


「おい。出ようぜ」

「あ、あぁ」

ん?あぁ、これが、ざわつくという事か。
俺が鞄を手に上着を持ち立ち上がったら、何かを感じた。今まで気にした事は無かった。
でも、これからは、視界の先に居る実季さんに、何かあってはと気にするだろう。その俺の体の向きや目線を追い、女子社員がざわつくかも知れない。何も、誰も見ていない…、宙を見るしか無いんだな。

「志野田…難しいな」

「ん?あ?そうでも無いぞ?
じゃあ行ってきま〜す」

志野田が女子社員の方に声を掛けた。

キャー。

「行ってらっしゃい」

「な?こんなもんだ、いつもな。全体に声を掛ける。さあ、お前も言えよ。まあ、お前は今まで一々掛けてなかったから急に始めたら驚かれるだろうがな。相手の身を案ずるならこれも努力の一つだ、ほら…」

急に習慣には…、逆におかしくならないか?…まあ、…習慣に、だな、

「…行ってきます…」

キャー!キャー!

「行ってらっしゃ〜い!」

「…は。な?ハハハ……しかし…凄いな。解っちゃいたけど。
誰に言ってるかはお前の心の中の事だ。いつもこうしておけば誤魔化しにもなる。さあ行くぞ?」

背中を叩かれた。

「アタッ」

「フ。ムカつくよ…お前の方がキャーが多いぞ」

「んな訳あるか」

はぁ…フ、…何言ってやがる…。人の事、王子様だって散々からかうけど、志野田だって人気がある事に違いはないのに。
ふぅ…なるほどね。声の掛け方なんて、全く無頓着だったな。少し勉強になったよ。
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