今日も明日もそばにいて
「あ、杜咲さん。おはようございます。昨日はすみませんでした。あの、早速なんですけど、神坂さん、何だか彼女が居るみたいで。今朝からいきなりな噂なんですけど。本当ならショックです…。でも、噂の出所が解らなくて。まだ解りませんよね?」

は?彼女の…噂…?知らないけど…。

「え?あ、そうなの?そうね、そうよ。噂は解らないから。真実かどうかは解らないでしょ?」

「そうですよね。まだ諦めるには早いですよね?フフ」

「そうね…」

彼女…。何だかタイミングのいい噂話ね…。私的には助かっちゃったけどね。彼女ね…。元々居ても不思議は無い。新しく出来たか、よりを戻したか…。そんなところかしらね。
ま、これも勝手な想像だけどね。


流石に今朝は話し掛けて来ない。だったら、メールの返事くらいくれてもいいのに。

ブー、…。あ、神坂君だ。念が通じたのかな。

【噂は、嘘です。俺が同期に頼んで流して貰ったデマですから。これで実季さん、恐い目に遭わなくて済むでしょ?】

…ふ〜ん。デマね…。でも、デマって…あの子達に教えてあげては駄目なのよね。
…ん?…私の為?…よく解らないけど。でも、…あ、そうか。そういう配慮…。

【この噂…有難う、でいいの?】


「あ、ハハハ」

「お、神坂、どうした?」

「ん?いや、何でも無い、ハハ」

「ん?」

【はい】

こう返したら考えるかな。


「悪かったな、妙な事頼んで、助かった」

「今の…。いや、おお。でも、今更小細工したところで。女子社員の探りは凄いからな、直ぐバレるさ。神坂なんて、誰と付き合おうが、彼女がいなくても、努力無しにはどうせみんな無理なんだから」

「あ?なんだそれ。意味が解らん」

「フ。変に王子様扱いされたら、誰かと付き合うのは難しいって事だよ。特に社内で公ってヤツはな」

「あのさ…流石にっていうか、その勝手な呼び名…。もう王子は無いだろ」

「いや、まだまだ。下にめぼしいイケメンも入って来て無いから、お前、まだ当分王子様だな」

「おいおい、二十歳そこそこならまだしも、30過ぎて何年経ったと思ってる…王子なんて…」

「2年だな」

「ああ、30過ぎたらもうおっさんだろ?きつい事言うな。……あのさ、俺さ…」

「おっと、皆まで言うな。解ってる。好きな人が出来たんだな…っていうか。今までキャーキャーされてても一切無反応。それがざわつき始めた。やっと動く気になったって事だ。…自信が出来たって事だ」

…。

「…ああ、んー、まあな」

「行け行け。何かあったら俺がダミーになってやるから」

「は?ダミー?志野田…。お前、彼女居るだろ」

「俺は社外だから大丈夫じゃないか。よく知ってるだろ?お前のは社内なんだろ?」

「あ、ああ」

「ま、頑張れや。お前には今の彼女との事、世話にもなったし。それはそれで全然関係無く、何があっても貸し借りなんて無しだから」

「…おお」
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