今日も明日もそばにいて

当の私はと言えば、ご機嫌ななめで拗ねて出なかった訳じゃ無かった。出られなかったのだ。
部屋に入り鍵をかけると、吸い寄せられるように寝室に向かい、ベッドに突っ伏した。そして睡魔に襲われた。
二人がドアの前で話していた事も知らなかった。勿論、電話もメールにも気がつかなかった。


……あ、痛たた…。ふぅ。酷い有様…脱いだのね。服が散乱してる…。飲み過ぎたみたいね…、はぁ。
携帯を見れば着信履歴、メール…。ごめんなさい…。来てくれてたのね。

【おはようございます、ごめんなさい。帰って直ぐ爆睡してしまったみたいです。来てくれていたのにごめんなさい】

ん?実季…そうか。本当に眠っていたんだな。

【大丈夫だ。志野田がちゃんと送ってくれた事を知っていたから。寝ていたのならしようがない。気にしないでくれ】

【ねえ?今日は遅い?】

【遅くなる予定】

そうなのね…。

【解った。後で会社でね】

【ああ、後で。大丈夫か?二日酔い】

【うん、なんとか】

ふぅ…。会社で顔を会わせても昨夜の話は出来ない。自然と週末まで持ち越しかな。気にしてるだろうから早く話したいのだが。
何でも無い話ではある。実季にとってはそうではないという事かも知れないが。断る理由が、好きな人が居ると言うのなら、教えて欲しいと言われた。
だから同じ会社の女性だと応えた。貴方のような人だから、相手は上司や役員のお嬢さんなのかと聞かれた。一般社員だと答えた。それ以上、具体的には応える必要はない。簡単に言えばそれだけの話だ。
ただ、もう二度とこんな事はないし、こうして二人で会う事も出来ないから、もう少し時間をと、どうしてもと懇願され、酒を飲む羽目になった。だからある程度の時間、帰れなかった。…送らなければならなかったし。
もう会うことは無い、というのは私的の部分だ。仕事では今後も二人で会うのだ。
令嬢といえども、きちんと仕事をして、できる営業だ。公私混同はない。だからこんな事で担当を代わるなんて事はしないだろう。
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