今日も明日もそばにいて

…ん?デスクの上にドリンク剤が置いてあった。小さい目立たない付箋が巻き付けるように貼ってある。力こぶの絵だけが書いてあった。
…フフ、フフフ。これは神坂君からの気遣いだと思って間違いないのよね?
あ、でも、イラスト…上手だったかな?もしかしたら事情を知ってる志野田君かも知れない。
瓶に水滴が付いていた。早く来た人に間違いは無いけど。
…折角だから、頂こう。

ドリンク剤を手に休憩室に向かった。
パリパリッと開け、腰に手を当て一気に飲んだ。

「ふ、…はぁ…」

この付箋は捨てずに持っておこう。
剥がして二つに小さく折り、ベストのポケットに押し込んだ。

瓶は捨てた。よし、頑張るぞ。

「あ、杜咲さん?大丈夫でしたか?」

「あっ、おはよう志野田君」

ハハッ、イラスト同様、小さいガッツポーズしたとこ、見られたかな。
これは志野田君だったのだろうか…。

「昨日、送ってくれて有難う。直ぐ寝ちゃったみたいなの」

「そうでしたか。いや…、飲ませ過ぎてしまったかなと思って、反省してます」

「うん。確かに結構飲んだね。フフ。でも、楽しかったし、美味しいお酒だった。あの…」

「はい?」

特に触れないという事は志野田君じゃないのかな?周りには誰も居ない。

「志野田君、彼女は大丈夫だった?」

「あー。昨日は会って無いし、特に連絡もしてないんで」

「え、そうなの?そんなものなの?」

「あ、はい。そんなもんですよ?あ、好きじゃ無いとか大事にしてないとかでは無いですよ?
信頼みたいなもんです。一々言わなくても解ってるから。杜咲さんの事も全然気にしてないですから、大丈夫です。逆にこうだったって詳しく説明したら、そんなに説明する方が怪しいって言うタイプで。俺にしたらちょっと寂しいくらい、どんと構えてるやつなんで」

「そう。素敵な人ね。出来た人だわ」

…。そうは言っても、ちゃんと話してるんだろうな。そうして信頼は成り立つのよね。

「そこへいくと、私はまだまだ初心者中の初心者ね…。信じてるって思っているし口にしてるけど、それとは別に…拗ねてばっかりだから」

「それはそれでいいんですよ?あいつにご機嫌をとらせてやればいいんです。前も言ったと思いますけど、妬くって悪い事では無いから、気持ちに正直でいいと思います。妬いてくれるって嬉しいですからね。俺なら大歓迎です。そんな態度取られたら毎日愛しちゃいます。押しのけられるでしょうけど、ハハハッ」

…大らかで、解り合ってて…素敵。人を羨んでばかりでは駄目ね…。

「…はぁ、もっと大人にならないと…嫌な気にばかりさせてるようで申し訳なくて…」

「いいんですよ。そんな事で壊れたりしませんから」

「…いいの?」

「はい、いいんです。あ、そろそろ時間ですね。じゃあ、俺は、これで」

「うん、有難う」

…でも、志野田君の彼女はどんと構えてるでしょ?
妬くような対象じゃないと、割り切れているから…。それでも私なら妬いてしまう。
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