俺の手が届く範囲にいろ。


『早くしないと、他の女の子に
成川くん取られちゃうよ?』


……また思い出しちゃった。
菜々ちゃんの言葉。


「……ごめん佐野さん。
俺、佐野さんの気持ちには応えられない。」


「……っ」


「でも…好きになってくれて、さんきゅーな」


…下から聞こえるやり取りに
わたしは窓を閉めることも忘れて
2人のことを見つめていた。


「っ…わたしじゃ、どうしてもダメですか…?」


「……ごめん、俺のせいで泣かせちゃって」


……涙を流す女の子に
京ちゃんはタオルを渡している。


……京ちゃんは優しい。


小さい頃から、みんなに優しくて…。


そんな京ちゃんが、わたしは大好きで。


だけど……


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