俺の手が届く範囲にいろ。


……ちゃんと気持ち伝えなきゃ。


京ちゃんの気持ちが変わっちゃう前に…


手遅れになる前に…気持ちを伝えないと。


「っ……」


そんなことを思いながら、
わたしは止まりそうにない涙を
ゴシゴシと袖で拭っていた……そのとき。


__ぐいっ…


「……へ」


…不意にわたしは
誰かに腕を引っ張られた。


「…ごめんね、見てらんねぇよ…」


「っ……」


そんな言葉と同時に、
わたしは誰かの腕の中へと…


……包み込まれる。


__ドサッ……


持っていた本が、床に落ちた。


鈍い音が室内を響かせた。

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