俺の手が届く範囲にいろ。
「っ……なにやってんの、おまえ」
「…っ…痛かったら、泣いてもいいんだよ」
「……は?」
「だって京ちゃん、
なんか泣きそうな顔してるんだもん」
わたしがそう言うと、京ちゃんは腕の中で
「………してねーよ」と呟いた。
「…してるよ。……わたしが辛いとき
いつも京ちゃんは、こうしてくれたから…」
小学生の頃、友達とうまくいかなくて
泣いていたときも……
わたしが失恋したときも……
いつだって京ちゃんは、
優しくしてくれた。
だから、わたしも……
「………でも、実月」
「……ん?」
「…俺、まじで痛くねーよ」
「……へぇ?」
そんなマヌケな言葉と同時に
わたしは抱きしめていた手を
思わず離した。