ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
真面目くさった顔で真正面から言葉を投げ掛けられた。
野球で言うところのストライクを決められたようで、一瞬、ビクン!と心臓の音がする。


「で、でも、今日は予定があり、ます」


辛うじてファールに持ち込んだつもりだったけど甘い。


「別に今日とは言ってない。明日でも明後日でもいいし、何なら土日でもOKだ」


ペラリ、ペラリとスケジュール帳のページを捲りながら話す。
一瞬の隙も見せない態度に、つーっと冷や汗が滲んだ。


「こ、今週はちょっと……来週もまだ、予定が組めてなくて……」


お断りが上手くできなかった。
社長はチラッと私の様子を窺い、「じゃあ」と声を発した。


「来週の木曜日辺りで時間を作っておいてくれ。場所は僕が予約しておく」

「い、えっ、あの、い、いいです…!」


予約とかしないでいいし、そもそも貴方とは食事する意思もありませんし…!と伝えたくても………


「決まりだな。じゃあ戻ってヨシ」


パタンとスケジュール帳を閉じてしまわれた。

デスクの上に乗せられある書類の数々を眺めながら、ガックリと項垂れて出ようとする私に再び声が掛けられた。


「あっ、ちょっと片桐さん」


(何ですか〜〜?)


フザケた気持ちで振り返ると、社長は一枚の書類を手に近づいてくる。

背の高いヒョロッとした体型の彼が側に来ると、ふわりと優しい香りが漂った。


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