五月雨物語
「でも、陽平はひとつだけ
お願いがあるって言いました。

錬ちゃんに会わせてほしいって」

「え?錬に、ですか?」

「はい、話したいことがあるって」

錬からは何も聞いていない。

「何を話したかは
私も知りませんが・・

でも、錬ちゃんが
お医者を目指していることは
知ってました。

そして、昨日発つ前に
あの封筒を預かったんです。

貴方に渡せばわかると
言ってました。

陽平が東京から持ってきた物は
あのノートと看護士の教科書と
少しの身の回りの物だけです。

その意味がわかりますよね?
由良さんなら。」

そう言って優しく微笑んだ。

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