子供達は夢を見ない
一章〜エンチル〜
『希望を捨てないで…』

写真で微笑んでいる君は俺に言った。

君はもう永遠に帰らない。

彼女は大人になった結果、良いように使われ、呆気なく死んだ。

何故あの時止めなかった?

自分には止める力があった筈だ。
だか、彼女を止められなかった…。

あれから何回後悔しただろうか?

後悔しても君は戻らない。

コンコン。

ドアが叩かれる。

「はい…」

「唐木君居ますか?」

ドアから眼鏡を掛けた子供が顔を出した。
この世界の子供は年では無い。『エンチル』か否かだ。

「なんだ…八重野か」

唐木はひそかに隠していたナイフを机に置いた。

「あいからわず君は用心ですねぇ」

「用心するに越した事は無いだろう?君だって背中にナイフを隠しているだろう?」

「…流石、三番隊隊長です。見抜かれてましたか?」

「それで用件はなんだ?」

「そうそう、忘れてました。新しく『エンチル』の希望者が集まったみたいなので、適性テストをお願いしたいみたいですよ」

「え〜。めんどくさいな…。専属の奴らが居るだろ?」

「彼等はこの前の戦いで負傷してるから、無理なんですよ」

「…分かったよ。場所は?」

「F棟地下一階ですよ。Level3のカードキーは持ってますよね?」

エンチルの建物はLevel1〜5まで重要度別に鍵のレベルが違う。
高いほど重要施設という訳だ。

「なんだ、俺の最高レベルのキーじゃないか?」

「この前大人…つまりマッドの侵入を許したんでレベルが上がったんですよ」

「…じゃぁ、行ってくるよ」

「良い結果を待ってますよ」

唐木はF棟地下一階に向かった。
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