テレビの向こうの君に愛を叫ぶ

「あーそう、別にあの顔になれとは一言も言ってないけどね。
…そもそも私が中丸のことを応援してるのは、泣き虫紘那が東雲澪と付き合うよりも、中丸と付き合った方が、笑顔でいられるんじゃないかって、そう思ったから。
それなのに中丸が泣かせてどうするの。
それじゃあ、顔も性格もいい東雲澪と付き合った方がいいに決まってるじゃん。」


私はひらりと壁から離れた。

私の言葉に、もはや怯えや恐怖さえ垣間見える彼の顔を一瞥し、私は踵を返した。

私の言葉はキツイ、とよく周りから言われる。
思ったことをなんでも言ってしまうのもそうだし、妙に現実主義なのも原因だろう。
幼稚園や小学校に通ってる頃は、よく男の子を泣かせてたっけ。
そういえば、最後についたあだ名が「大将」だった。


言いたいことは言った。
あとは中丸がどうしたいかだ。


晴れて澪君と付き合うことになった紘那を振り向かせることは、ほぼ0パーセント不可能。
だって、あんなに好きだったんだから。


小学校高学年からずーっと一途に澪君澪君。

誰かに告白されても断り、「好きな人がいるから」と笑う紘那を、私は何度も見た。
その好きな人がアイドルの澪君って知ったら、振られた人はどんな気持ちになるんだろ。


それはともかく、次に中丸ができることといったら、自分から行って砕けるか、何かが起こるのを待つか、この2つだろう。
あとはあいつ次第。


私は真っ青な冬の空を見上げた。
空はどこまでも高くて、綺麗に澄み渡っていた。

いつか、紘那と見た学校帰りの空になんとなく似ていた。
春はタンポポの綿毛を吹きながら、夏は猫じゃらしを片手に、秋はどんぐりを拾い、冬は雪で遊びながら、紘那と歩いた小学校の通学路と、そんな私たちを見下ろす空。
いつもいつも、それは私たちを見守ってくれていた。
どうか、紘那を悲しませないでください。
私は目を瞑る。
紘那には、小さい頃たくさん泣いた分、これからはたくさん笑ってほしいんだ。
< 165 / 240 >

この作品をシェア

pagetop