テレビの向こうの君に愛を叫ぶ

『紘那ちゃん、相手の女優、知っとるか?』


「うん、倉持緩。」


『そうや。…全部あいつが企んだことなんや』


春翔君はゆっくりと話を進める。


『あいつ、芸能界の中でも我儘で有名なんや。なにか気に入らないことがあると、すぐに事務所辞めるだ、舞台降板するわ、大騒ぎするんよ。でもあいつは事務所の稼ぎ柱。せやから、事務所もあいつの行動にはあまり口出しできへんらしくって、やりたい放題やねん』


なんとなく、そんな話は聞いたことがある。
以前、優恵ちゃんも似たようなことを言っていた。


『…澪ちゃん、紘那ちゃんのこと心配してはったで。紘那ちゃんのこと傷つけてしもうたって』


私はこれを聞いて、さっきの澪君からの電話に出なかったことに後悔した。
きっと、私が電話を無視したことで、さらに澪君を心配させてしまっている。
澪君には、明日も仕事があるのに。
よく考えれば、澪君がそんな浮気みたいなことするわけがない。
それなのに、そう疑って、別れを告げられるのを怖がっていた自分に、私は腹が立った。
私は澪君のことを信じられなかったんだ。
薄情な女だ。私は。


その後、あれこれ私を慰めるようなことと、澪君の弁明を繰り返して、春翔君は電話を切った。
私、どんな顔で澪君と話せばいいんだろう。
考えれば考えるほど分からなくなって、胸が苦しくなった。



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