テレビの向こうの君に愛を叫ぶ

私は送られてきた写真を見た。
遊園地をバックに写る澪君と私。
どの私も幸せそうで、どの澪君も楽しそうだった。


あ、私……半目だ。
これは口開いてる!

送られてきた写真の半分くらいは、澪君が隠し撮りをした私だった。

私はひどいっと口を尖らせる。
でも、次の瞬間にはふわっと笑みが溢れてしまう。

だって、澪君が私に気づかれないようにコソコソ撮っていたと思うと、なんだか微笑ましくて、愛おしくて。


ぶーっ


ほんの数分後、再び画面が光った。
浮かび上がるのは東雲澪の文字。




『良かった。心配してた。
次からは家着いたらすぐ連絡してよね(笑)

ん?何その機能、知らない。
今度会ったとき教えて』




私はシャットダウンしそうな頭を必死に整理する。

嬉しくて、嬉し過ぎて脳が異常反応を起こしている。


気に掛けてくれていた。

もちろんそこも嬉しい。

でも……



『次からは』『今度会ったとき』



それってつまり、また会える…また会おうってこと…だよね?


もう会えないと思っていた澪君。
次はいつ会えるかな。
来年のコンサートの前に会えるのかな…。


『もちろん!またゲームの話したいな』


そうメッセージボックスに打ち込んで、また送信ボタンを押そうとする。

今度は押すのをやめて、枕にぽすっと顔を伏せた。

誰かの歌の歌詞で、すぐに返事はしちゃだめって歌われていたのを思い出したのだ。

紗乃もよく、彼氏からの返信を少し間を置いてからしてたっけなぁ。

私は、「なんですぐ返さないの?」と紗乃に聞いてみたことがある。
紗乃は、「少し焦らすの。駆け引きだよ」って大人の顔をしていた。

そのときの私は、紗乃が言ってることなんて、さっぱり理解できなかった。

でも、今ならなんとなく…なーんとなくだけど分かる気がする。
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